目的と理由があることを忘れずに活用してみること

一番初めに屋内から屋外へ射られた矢は、おそらく戸口から放たれたのではないでしょうか。その場にいたわけではないのでこれは想像ですが、あながち外れていないと思います。弓を引いた者は、戸口が開いていては反撃の矢から十分に身を守れないとすぐに気づいたはずです。戸口をなくすわけにはいきませんが、次に戦いに備える際には、窓から攻撃する方がまだ安全だろうと考えたに違いありません。やがて大きな窓より小さな窓の方が優れていることを悟り、攻撃に最適な「aperture」(開口部)を作るに至ったのでしょう。それは分厚い壁に作られた矢挟間(矢を射るための穴)で、壁の内側では完全に隠れた状態で大きく弧を描くように矢を放つ角度を決めることができます。とはいえ、この矢狭間が考案された後も、大小の窓や戸口は残りました。各サイズの開口部はそれぞれ適した役割を持ち、存在意義があったからです。城であれば、出入りのための戸口、明かり取りのための大きな窓、換気のための小さな窓、攻撃のための矢狭間といった具合に。

これから何の話を始めるのか既にピンと来ている方もいるかもしれません。ここでは写真家に関係のある「aperture」と、それを活用するシチュエーションに注目したいと思います。

写真家が「aperture」と言う時、それは開口部ではなく「開放(絞り)」を意味し、これもまた特定の目的に合うよう設計されています。ほとんどのレンズには少なくとも8段階の絞りの設定があり、8種類の効果を表現できます。ところが、以前私が行った調査によると、多くの写真家が2、3の設定しか使っておらず、レンズの性能を十分に活用していませんでした。絞りにさまざまな値があるのには、それなりの理由があります。試しに皆さんのアーカイブをf値ごとに検索してみてください。使っていないf値や、自分の選択がいかに画像創作の可能性を狭めているかがわかるはずです。

なぜ8段階必要か

絞りの主な機能はカメラに入る光の量の調整であることは皆さんご存知のことでしょう。開放するほど光の量が多くなり、絞るほど少なくなります。これが基本で、注意深い写真家であれば、いくつかの設定を試してクオリティを検討します。物理学が示すとおり、絞りが最大でも最小でも最高のクオリティは生まれません。シャープネスや解像の点から言えば最適設定は標準値(通常はf/4かf/8)になる傾向があります。一般的にはこの設定で全体のシャープネスはベストの状態となり、フレームの端から中心にかけて最も均一的な解像感が得られ、「ケラレ」現象(ビネット効果)が出にくいとされています。

確かなクオリティを求めるなら、当然絞りは標準値が一番ですが、面白みには欠けます。安全志向で技術的にベストな結果を出すことにこだわれば、多くの人が写真を判断する要素――創造性やドラマや雰囲気――を逃すことになりかねません。

絞りの度合が8段階あるということは、それぞれが異なる見た目に仕上がるということ。そうした違いは被写界深度の調整によりほぼ決まります。たとえば、撮影者が見てほしいところへ見る側の目を引きつけるには、絞りを開放寄りにします。前景から遠景まですべてをくっきりさせることが被写界深度の調整とは限りません。絞りを開放寄りにして焦点を選択し、真っ先に注目してほしい部分のみを確実にシャープに仕上げることも可能です。見る側の視線と注意をコントロールすることができるというわけです。開放寄りの場合、エッジがやわらかになり、やや角に陰影がつくはずですが、クオリティ面で失われた要素は、ぼんやりとした背景にくっきりと浮かび上がるフォーカスされた被写体の迫力で補われます。

最近のレンズは、最大開放での性能が格段に良くなっている一方、f/1.8では無難な標準値の設定ほど効果的な結果を得られません。単焦点レンズの開放設定は、ズームレンズの同じ設定(その他の要素もすべて同等の条件)よりずっと高いクオリティを生むので使わない手はありません。

もっと大胆な絞りの設定を試して、作品にきらめきや刺激や躍動感をもたらしてみませんか。毎回ではなくとも、もっとたくさんチャレンジしてみてください。

・  前景から背景までシャープにしたい時。たとえば、このように男性と背景の眺めの両方を見せたい場合。f/8

1

・  人物を背景から際立たせたいけれど、遠方に何があるのかはっきりわかるようにする場合。f/2.5

2

・   被写体はiPad miniなので、こうしてそれ以外の部分をソフトにすることで、最初にどこを見るべきか一目瞭然です。f/1.2

3

・  開放寄りは美しくぼかした背景からバストアップの人物像を際立たせるのに優れています。f/1.2は技術的に完璧に近い絞り値ではありませんが、ほとんどの場合、誰もそのことに気を留めません。

4

・   f/4は開放寄りで冒険だと考える人もいますが、ダイナミックなf/1.2より力強さは薄れます。

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Damienは写真尽くしの日々を送るAmateur Photographer誌の元エディター。撮影以外の時間は、www.dpreview.comをはじめとするウェブサイトやAP 誌、British Journal of Photography誌等の雑誌向けに最新のカメラやレンズに関する記事を執筆したり、商品試用テストを行う。また、新商品や従来の器材の最善の利用法、一段上の写真に仕上げるノウハウを写真家に伝授するなど後進の指導にもあたる。情熱を傾けているのはストリート・フォトグラフィーだが、ジャンルを問わず写真をこよなく愛する。英国に拠点を置き、ロンドンや全国で定期的にワークショップを開催。